自分がバルコニーでどれだけ呆然としていたのか分からなかったが、赤ちゃんの悲痛な泣き声が二階から聞こえてきて、彼女はようやく我に返った。
急いで階下へ駆け下りた。
縁子はとても良い子で、普段泣いても一声か二声で終わるのだが、このわんわん泣く声は彼女が風邪を引いて病気の時にしか聞いたことがなかった。
彼女の宝物はどうしたのだろう?
焦りで賀川心の顔色が突然真っ青になり、足取りはさらに速くなり、ほとんど駆け寄るようだった。
そして彼女が赤ちゃんの部屋に着くと、背の高い細身の女性の後ろ姿が見えた。この後ろ姿は病院で見たことがあった。石田美帆だ、葉山剛の妻だ。
「縁子……」賀川心は急いで駆け寄った。
この時、縁子はまだ女性に抱かれており、彼女は何かを口にしながら、子供をあやそうとしているようだった。