第151章:策略にはまった2

あの時、彼らはただ簡単に一言二言交わしただけで、特に多くを語ることもなく、ただ近所同士の助け合いに過ぎなかった。彼は全く気にも留めていなかった。

しかし、その後起きた出来事が、見知らぬ彼らを親しい間柄に変えていった。

そのことを思い出し、深山義彦は突然拳を握りしめ、目には消えない憎しみの色が滲んでいた。

ある夜のことだった。彼は会社の幹部数人と問題の発生したプロジェクトのために夜中の12時過ぎまで忙しく働いていた。会社を出た後、彼は家に帰るつもりはなく、アパートへ向かった。そのアパートは会社から700メートルも離れておらず、車を使う必要もなく、歩いて行けるからだ。

当時彼はとても疲れていて、ひどい頭痛がしていた。さらに頭の中では解決策を考えていたため、道路を渡る時も後ろの人に注意を払わず、車にも気を配っていなかった。それは横断歩道だったが、交差点ではなく、信号機もなかった。彼はただまっすぐ渡って、さらに二、三百メートル歩けばアパートに着くはずだった。しかし、彼が道の約三分の一ほど渡ったとき、一台の乗用車がどこからともなく現れ、ほぼ直線的に彼に向かってきた。彼が反応する間もなく、誰かに数メートル先へ押しのけられた。振り返ると、地面に倒れている少女がいた。それが夏目美香だった。