「お母さん、どうしてこんなことに?」
吉田涼子は母親を給湯室に引っ張り込んだ。嫉妬で顔を赤らめ、時折服の裾を掴んでいた。
葉山蓮も頭を抱えていた。この甥はいつこんな女性を手に入れたのか、結婚式があったという話も聞いていないのに、突然妻がいるなんて?しかも、その妻は離婚歴のある女性だと聞いたばかりだった。
なんて馬鹿げているんだ!
「涼子……」葉山蓮は娘の肩を叩いた。「安心して、このことはお母さんがはっきりさせるわ。あの女性は恐らく葉山大輔の彼女で、妻なんかじゃないはずよ。それに、あなたの叔父さんも叔母さんも、離婚歴のある女性と結婚することに賛成するはずがないわ」
葉山蓮は、この所謂結婚が兄の葉山史郎の同意を得ていないことを確信していた。
母娘が頭を寄せ合って何かを相談している間に、入り口にいた少女がすべてを見ていたことに気づかなかった。