賀川心は葉山大輔に微笑みながら歩み寄り、彼の隣に座り、頭を軽く彼の肩に寄せた。
「邪魔してるかしら」彼女は申し訳なさそうに笑いかけた。男性が仕事中に女性が傍に立って邪魔することを好まないことを知っていた。
葉山大輔はいつものように彼女の頭を軽くたたき、顔には優しい笑みを浮かべていた。
「大丈夫だよ、君がここにいてくれるだけでいい」
そう言うと葉山大輔は返信すべきメールを打ち続けた。
賀川心は隣に座って見ていた。書類はマーケティング部に返すものらしい。彼女はそうして彼が疲れを知らずにコマのように忙しく働くのを見ていた。
実は彼女が入ってきたのは、先ほどの電話が彼女の心を乱したからだった。悲しい過去に囚われたくなかったので、ここに来たのだ。彼の傍にいるときだけ、彼女の心は特別に落ち着くことができた。