第231章:これこそが普通の夫婦

しかし妹はすでに20年以上行方不明で、失踪した時はわずか1歳半だったため、この家を覚えているはずもない。今となっては見つけることはほぼ不可能だ。

賀川心は葉山大輔の手を引いてこの部屋を出た。これは彼女の両親の部屋で、9年間誰も寝ていない。彼女はこの部屋を元のままの状態に保ち、服一枚、紙一枚も捨てなかった。

お母さんが亡くなったばかりの頃、彼女はよくこの部屋で泣いていた。当時彼女はまだ16歳だったが、人生で最大の苦しみを味わった。両親を失い、祖父母を失い、彼女を気にかけ愛してくれた親族全てを失った。残された親戚は一人一人が彼女を知らないふりをし、彼女が学費を借りに来ないよう、関係を絶とうとした。

あの時、彼女はお母さんの後を追いたいという思いさえ抱いた。しかし彼女は強く生き抜いた。なぜなら、どんなことがあっても一生懸命生きていくとお母さんに約束したからだ。