第269章:絶望するほど痛い

同じ時間。

高級VIP病室の中で、白いカーテンが夜風に揺れて舞っていた。窓から、深山義彦は夜空に輝く一輪の明るい月を見ることができた。

彼は空を見上げ、長い間視線を移さなかった。看護師が点滴を交換しに来ても、振り向いて見ることさえしなかった。

月光は水のように淡く、涼しげに夜都のすみずみまで照らし、彼の心の中にも差し込んでいた。

彼は片手で常に携帯電話を握りしめ、着信音が鳴ることを期待していた。

しかし、彼は彼女からの返事を一言も待つことができなかった。

絵文字一つさえもなかった。

彼女は彼に対して本当に言葉もなく、何も言うことがなかったのだろう。

そして彼は本当に彼女を完全に失ってしまったのだ。

心姉、どうすればいいんだろう?もう私たちに可能性がないことはわかっているけど、それでも君を手放したくない、諦められない。葉山大輔が私よりも良くしてくれるとわかっていても、君が彼のそばにいることを望まない。