深山義彦は目を伏せ、その瞳には以前の輝きがなかった。彼は軽く首を振った。
顔には普段の仕事への情熱が微塵も見えなかった。
家庭は崩壊し、お母さんは半身不随、息子も自分の子ではない。彼にはもう仕事をする情熱も、お金を稼ぐ意欲もなかった。
そんなにたくさんのお金を稼いでも何になるのか。今の資産だけでも何世代も暮らしていけるほどある。でもお金で妻を取り戻せるだろうか?血のつながりのない息子を実子にできるだろうか?
お金は何も変えられない。ただ夏目美香のような計算高い女を引き寄せ、そして私生児を生ませただけだった。
彼はもしお金がなければ、もっと幸せだったかもしれないと思った。そうすれば彼と心姉は普通のサラリーマン夫婦として暮らせただろうし、夏目美香も彼に近づかなかっただろう。