深山家
退院して二日目の木下奈々は自宅の玄関先に座っていた。六月の空はまだそれほど暑くなく、夕暮れ時の西に沈む太陽と心地よい風が吹き、とても涼しかった。
彼女は車椅子に座り、目は遠くの夕日を見つめていた。
人は日が西に傾くと言うが、人が老いるとこの夕日のように、そう長くは経たずに地平線の彼方に消えてしまうものだ。
彼女はまだ五十代だが、すでに老いていた。この大病で命の半分を失いかけ、今は車椅子での生活を余儀なくされ、左手さえ自由に動かすことができず、時々震えることがあった。
食事さえも息子が食べさせてくれる。唯一の慰めは、一ヶ月前のように言葉が不明瞭ではなくなったことだ。リハビリと治療のおかげで、今では普通の人のように話すことができるようになった。
人は失ってから初めて他人の良さに気づくものだ。彼女もそうだった。