第362章:彼女を見舞いに行く

彼は彼女がその時きっと絶望していただろうと思った。今の自分と同じように絶望していたのだろう。

心姉、見てごらん、天はなんて公平なんだ。僕は君を傷つけたけど、結局何も手に入れられなかった。

今なら君も心を晴らせるだろう。だって君が経験した痛みを僕も経験したんだから。

深山義彦は突然顔を上げた。どういうわけか、特別に悲しい気持ちになっていた。彼の目尻には一筋の涙が光っていた。

呉羽敏子はドアをノックした。

「旦那様、食堂でお食事の時間です」

深山義彦は急いで目尻を拭った。悲しんでいる姿を他人に見られたくないようだった。

彼は振り返り、淡々とした目で目の前の使用人である呉羽敏子を見た。この使用人は4年前に心姉が連れてきたもので、心姉の故郷の人のようだった。

心姉が家にいた頃は、呉羽敏子とも仲が良さそうだった。