「林田さん、羽柴社長は今会議中で、オフィスにはいらっしゃいません」
林田希凛は秘書をちらりと見て、微笑みながら羽柴明彦のオフィスのドアを押し開けた。「大丈夫よ、ここで彼を待つわ」
秘書は仕方なく座り直し、もう何も言わなかった。
林田希凛はもともとこのオフィスの常連で、時々訪ねてくるので、みんなすでに慣れていた。
「羽柴社長はなぜ林田さんを捨てて他の人と結婚したんだろう?私はずっと二人はカップルだと思っていたのに」
「変なこと言わないで、林田さんが先に婚約したんだよ」
羽柴明彦が近づいてくるのを見て、みんなは急いで口を閉じた。
「どうしてここに?」
「もちろん、あなたに助けを求めに来たのよ」林田希凛は立ち上がり、羽柴明彦の前に歩み寄った。「見殺しにはしないでしょう?」