第16章 機に乗じて教えを請う

「奥様、お帰りですか?」

夏目芽依が玄関に入ると、鈴木ママがすぐに迎えに来た。

「ええ、羽柴明彦は?」

「旦那様はお出かけになってまだお戻りではありません。奥様、何か食べたいものはありますか?作りますよ。」

夏目芽依が羽柴明彦の妻だと知ってから、鈴木ママの態度は180度変わり、彼女に対して細やかな気配りをするようになった。

「今は食べたくないわ、休んでいていいわよ。」

「あ、そうだ」夏目芽依は突然彼女を呼び止めた。「鈴木ママ、前に旦那様の日常の食事の世話をずっとしていると言っていましたよね?もう何年も経つんですよね?」

「はい、旦那様にご信頼いただいて、その面では私がずっと担当しております。」

「そう〜じゃあ彼の日常の生活リズムもよくご存知なんですね?」

この言葉を聞いて、鈴木ママは自信満々な表情を浮かべた。「もちろんです。外では言えませんが、旦那様がご自宅にいる時は、少し動くだけで何をしようとしているのか分かります。」