「えっ?夏目芽依、まだ帰ってないの?」
金田凛香はオフィスのホールを通り抜け、夏目芽依がまだ自分の席に座り、パソコンの画面を見つめているのを発見した。
「まさか?初日からそんなに熱心に働いて、私たち古株社員を恥ずかしくさせるつもり?」
夏目芽依はようやくデザインソフトから意識を引き離した。
「今日は鈴木主任がたくさんの仕事を割り当ててくれたの」と彼女はため息をついた。「まだたくさん残ってるから、終わらせないと帰れないわ。そういえば、今何時?」
金田凛香は携帯を取り出し、「6時15分よ」
「えっ?!」その時間を聞いて、夏目芽依は椅子から落ちそうになった。
「どうしたの?」
夏目芽依はもう一度時間を確認した。本当に6時15分だった。
この外資系企業の通常の勤務時間は朝9時から夜6時まで、残業の習慣はなく、ほとんどの人は定時になると自動的に帰ってしまう。それが彼女がこの会社に入りたかった理由の一つだった。