羽柴家を離れ、夏目芽依はようやく一息つくことができた。このような大家族に対しては、常に神経を張り詰めていなければならず、長時間になると疲れるものだった。
「おばあちゃんが私に何かくれたの」
彼女は箱を大事そうに持って、羽柴明彦の前に来た。
「ふん」
「何か気になるでしょ?」芽依は彼を見つめた。
「気にする必要があるのか?」羽柴明彦は問い返し、目は手元の本から離れなかった。
「もちろんよ」芽依は彼の隣に座り、「これはあなたの家のものよ、とても貴重なの」
羽柴明彦は口元を歪めた。「うちには貴重なものなんていくらでもある」
「それに、父が亡くなってから家は分かれている。私は彼らとは家族ではなく、親戚に過ぎない」彼の冷たい態度は先ほどの羽柴家の雰囲気とはかけ離れていた。おばあちゃんのことを思い出し、芽依は思わず腹が立った。