客人たちはほとんど揃っていた。おばあさまは立ち上がり、夏目芽依の手を取った。
「さあ、あなたは私の隣に座りなさい」
そう言って彼女を主席の自分の隣の席に連れて行き、「どこにも行かないで、ここで私に付き合いなさい」と言った。
夏目芽依は座って、少し離れたところにいる羽柴明彦を見た。自分は今、彼の親戚や友人たちに囲まれ、全く知らない人ばかりなのに、彼は自分を助けに来る気配もない。本当に情けない。
「あなたのおかげで、明彦くんは今では家族の集まりに参加してくれるようになったのよ。以前は私たちがどんなに工夫しても彼は来たがらなかった。やっと偶に来ても、二分と持たずに帰ってしまっていたわ」とおばあさまは残念そうに言った。
夏目芽依はようやく理解した。彼女をここに留めておくのは、羽柴明彦を繋ぎとめて、彼が気ままに帰れないようにするためだったのだ。