「ほら、あなたのパソコン」金田凛香はバッグからパソコンを取り出した。「会社では同僚たちがあなたがどうしたのか聞いてくるの。真夜中に木から落ちたなんて言えないから、階段を降りるときに足をひねったって言っておいたわ。うっかり本当のことを言わないでね」
夏目芽依はうなずいた。彼女が言わなくても、こんな恥ずかしいことは適当な言い訳でごまかすつもりだった。
「鈴木主任は私の休暇申請に文句言わなかった?」試用期間中にこんな時に病欠するのは本当に不適切だけど、今の状態では通勤のバスに乗るなんて現実的ではない。
「鈴木さんは何も言わなかったけど、文太さんはあまり嬉しそうじゃなかったわ。一言も言わなかったし」金田凛香は続けた。「彼は新しいプロジェクトを受けたばかりで、あなたをチームに入れるつもりだったみたいだけど、今日来なかったから、これからどうなるかわからないわ」