第68章 馬が前足を踏み外す

「羽柴明彦、あなたって変態よ!」夏目芽依は木の下に立ち、呆れた顔で上を見上げていた。

5分前。

羽柴明彦はベッドの下から大きな箱を引き出した。「お前の物はすべてここに入っている」

夏目芽依は急いで箱を抱きしめ、何度も確認した。以前高額で購入したあの高価な服がこの中で2日間も圧縮されていたら、シワシワのぼろ布になってしまうのではないか?確かにお金は自分のものではないが、それでも自分の後半生の幸せと引き換えに手に入れたものなのだ!

「あれ?」夏目芽依は力を入れて箱を開けようとしたが、失敗した。「この箱、鍵がかかってるわね」

羽柴明彦は口元に笑みを浮かべ、意地悪そうに彼女を見ながら、しゃがみ込んだ。

「そうだよ、でも鍵は自分で探してもらうことになる」

今どきの時代に...箱を開けるのに鍵が必要だなんて!暗証番号式の錠前を知らないの?夏目芽依は心の中で叫んだ。彼がわざとやっていることは分かっていた。