「さあ、片桐社長、この海老の天ぷらを召し上がってください。このお店の看板料理ですよ」鈴木主任は熱心に海老の皿を片桐恭平の前に寄せたが、彼は手を伸ばしてそれを遮った。
「自分でやる」
鈴木主任は口角を引きつらせ、一瞬硬直した後、すぐに満面の笑みを浮かべた。「はい、はい、どうぞご自由に」
夏目芽依は手を伸ばして海老を一つ取った。鈴木主任のこの様子は、彼女のような一社員の部下でさえも少し居心地の悪さを感じさせた。やはりこういう社交の場は彼女にとってまだ経験が足りないようだ。
「気をつけて」汁が服に垂れそうになるのを見て、片桐恭平はごく自然に手元のナプキンを取り、夏目芽依の膝の上に広げた。
「ありがとう…」夏目芽依は小声でお礼を言ったが、突然周囲の視線の熱さを感じた。この行動は同僚たちから見れば、きっと非常に不適切に映るだろう。