第80章 友達と言えなくもない

「夏目芽依、ちょっと来てくれ」佐藤文太は自分のオフィスから出て、夏目芽依を呼び、そう言うと会議室へ向かった。夏目芽依はすぐに手元の仕事を置き、彼の後に続いた。

「これから新しいプロジェクトのクライアントが具体的なデザイン要件について話し合いに来るから、一緒に聞いておいてくれ」佐藤文太は会議室のドアを開け、彼女を中に通した。

「これは我々が受け取った初期要件で、要求設計はすでに完成していて、一部の初期作業もすでに完了している」佐藤文太は印刷された文書を会議室にいる各デザイナーに配布した。夏目芽依の他に、3年以上の実務経験を持つ優秀なデザイナーが2人おり、全員が佐藤文太のチームのメンバーだった。

「これは大きなクライアントだ。以前にも短期間の協力はあったが、ウェブサイトの広告表示などの小さなプロジェクトだけで、今回の規模とは比較にならない」佐藤文太は両手を組み、厳粛に皆に言った。「このプロジェクトでは、全体のウェブサイト、モバイルアプリ、メディア広告すべてを我々がデザインする。今回の協力が成功すれば、今後も次々とプロジェクトが来るだろう。皆さん、真剣に取り組んでほしい」