第79章 身分に相応しく

「どうして今頃帰ってきたの?」ドアを開けると、羽柴明彦がいつものようにソファに座って本を読んでいるのを見て、夏目芽依は不吉な予感がした。

彼女は鈴木ママの方を振り向いたが、鈴木ママは無実を示すように首を振った。

羽柴明彦の視線は鋭く、まだ彼女を見つめていた。

「あれ?今日はどうしてこんなに早いの。」夏目芽依は驚いた顔をして、「確か今夜はクライアントと食事の約束があるって言ってなかった?」

「キャンセルになった。」

「そう...」

夏目芽依は靴を脱ぎ、黙って彼の隣に歩み寄り、バッグから書類を取り出した。

「ほら、これはおばあさまからのお誕生日プレゼントよ。私にはよく分からないから、あなた自身で見てね。」

羽柴明彦は疑わしげに受け取り、株式譲渡契約書という文字を見て眉をひそめた。「おばあさんが君にこれを渡すように言ったの?」