「11番、夏目芽依。」
スクリーンに自分の名前が表示されるのを見て、夏目芽依は立ち上がり診察室に入った。
「どこが具合悪いですか?」
「昨日、肘を打撲したんです。将来傷跡が残らないようにする方法があるか見てもらいたくて…」夏目芽依は説明しながら袖をまくり上げ、傷を医師の前に見せた。
吉田左介は顔を上げ、夏目芽依を見て2秒ほど固まった後、システム上の名前をもう一度確認した。
「夏目芽依…さんですね。」
彼は今日手術の予定はなく、外科の診察室で診療を行っているだけだったが、こんな偶然があるとは思わなかった。一目で羽柴明彦の妻だと分かった。二人は多くの雑誌に掲載されており、特に羽柴明彦に注目している人にとっては、間違えようがなかった。
彼は夏目芽依の傷を一瞥した。「傷は真皮層まで達しています。傷跡を残さないのは難しいでしょうが、軟膏を処方しますので、かさぶたが取れた後、毎日朝晩塗り続けてください。ある程度の効果はあるでしょう。」