第83章 争いが起こる

「おばあちゃんが明日の週末に山登りに行くって言ったけど、僕は断ったよ」朝食テーブルで、羽柴明彦は無表情に言った。

「え?」夏目芽依は手に持っていた紫芋パンを落としそうになった。「私、もう承諾しちゃったのに」

この家では自分の言うことは通らないとはいえ、約束を破る人間にはなりたくなかった。

羽柴明彦は顔を上げて彼女を見た。「君が承諾したって、何の意味がある?」

そう言われても...夏目芽依は手の中の肉まんを置き、不機嫌な顔をした。おばあちゃんは彼女に優しくしてくれている。約束しておきながら反故にするなんて、きっと不愉快に思うだろう。

羽柴明彦は何事もなかったかのように朝食を食べ続け、彼女を見ようともしなかった。

「あなたが行きたくないなら私一人で行ってもいいわ。その時は適当な理由をつけて、あなたは仕事が忙しいって言っておくわ」夏目芽依は勝手に決めた。「それで丸く収まるでしょ」