「明日、おばあさんたちと一緒に山登りに行くわ、あなたが行くかどうかに関わらず」夕食後、夏目芽依は勇気を出して言った。「私が直接約束したことだから、約束を破るわけにはいかないの」
羽柴明彦は何も言わなかった。
夏目芽依は許可を得たと感じ、立ち上がって軽快な足取りで階段を上がろうとした。やはり羽柴明彦と話すときは強気な態度を取ると、彼が反論する確率がぐっと下がるようだ。
「足は良くなったのか?」背後から低い声が聞こえた。
「え?」彼女が振り返ると、羽柴明彦の視線はまだ自分のパソコンに向けられていた。
「筋や骨の怪我は百日かかると言っていたじゃないか。まだ数日しか経っていないのに、もう良くなったというのか?」
夏目芽依は胸を張った。「私は若いから、回復力が強いの」
羽柴明彦は彼女の方を向いた。「それはお前が言ったことだ。もし症状が悪化しても、私は知らないぞ」