ぼんやりとした意識の中で、夏目芽依は自分の携帯の着信音が鳴るのを聞いた。眠たげな目をこすりながら、枕の周りを手探りで探したが、見つからなかった。
夜中にその音が鳴り止まないことに苛立ちを覚えた。ふと、羽柴明彦が自分とたった一枚のドアを隔てただけだということを思い出した。もしこの着信音が彼の怒りを買ったら…そう思うと、彼女は急に体を起こし、ベッドサイドのランプをつけた。金田凛香からだった。
「もしもし…何してるの…」彼女はできるだけ声を低くして尋ねた。
「芽依、私の部屋のトイレに来て、緊急事態よ」
電話を切ると、夏目芽依は時間を確認した。もう1時近かった。この女、一体何を騒いでいるんだろう。真夜中に緊急事態って、まさか火事でも起きたの?…それに二つの寝室は両方とも2階にあるのに、わざわざ電話をかけてくるなんて。