「凡太、凡太…」
深夜、芽依は夢から目を覚まし、汗だくになっていた。
事故から数ヶ月が経ち、しばらく凡太の夢を見ていなかったのに、今日はどうしたことか。
先ほど水に落ちる場面が再現され、彼女は恐怖で震えた。
「もしもし、患者さんの様子を見ていただけますか?」彼女は私立病院に電話をかけた。
当直の看護師の声は澄んでいた。「どちらの患者さんのご家族でしょうか、記録させていただきます。」
「佐藤凡太の家族です。」
「少々お待ちください。」
焦りながら十数秒が過ぎた。
「お嬢様、佐藤凡太さんの状態に大きな変化はなく、まだ昏睡状態です。面会の予約をお取りしましょうか?」
「面会の予約?」
芽依は少し理解できなかった。凡太のいる病室は理論上、一日中面会可能で、制限はなく、朝8時から夜6時までの間に行けばよく、必要があれば夜も付き添いの申請ができるはずだった。予約の問題など存在しないはずだ。