「こんにちは、どうぞお座りください」
片桐恭平は紳士的に羽柴美波のために椅子を引いた。
「世界って本当に狭いわね。最初、知り合いかもしれないって言われた時は信じなかったけど、まさかあなただったなんて」羽柴美波はハンドバッグを隣の椅子に置き、両手を組んで顎に当て、少し首を傾げて彼を見つめた。
「ああ、君が明彦くんの従妹だって知ってるよ」
無理に言えば、二人は親戚関係だった。一人は羽柴明彦の従妹で、もう一人は羽柴明彦の母違いの兄。計算すると血のつながりのない兄妹ということになる。
ただ、菅原萤子が片桐润悟と結婚した後は羽柴家との付き合いがなくなったため、接点はほとんどなく、二人はお互いの存在を知っているだけで、めったに会うことはなかった。ほとんどの人は片桐恭平が菅原萤子の継子だと思っていた。