悩む、とても悩む。夏目芽依は家の玄関に立ったまま、中に入る勇気が出なかった。
これからどう言えばいいのだろう?彼女はまだ考えがまとまっていなかった。
「あら、奥様、どうして玄関で立ち止まっているの?」鈴木ママは台所のゴミを片付け、黒い大きなゴミ袋を持って玄関から出てきて、ちょうど躊躇している彼女を見かけた。
夏目芽依は彼女を引き寄せて、「羽柴明彦はどこ?」と尋ねた。
「旦那様は書斎で仕事をしているようですが、私も見ていません」鈴木ママは彼女を見て、「どうしたの?何かあったの?」と聞いた。
「彼は...機嫌が悪くなかった?」
「それは分かりませんね」鈴木ママは笑って、「中に入って見てきましょうか?後で教えますよ」
「いいえ、結構です」夏目芽依は急いで彼女を止めた。羽柴明彦はとても賢いから、きっと彼女が自分の指示を受けていることを見抜くだろう。こんな時は正直に話した方が勝算があるだろう。「行きましょう、中に入りましょう、外は寒いわ」彼女は肩をすくめた。