「芽依、この前の件はどうなった?話したの?」叔父がまた電話をかけてきた。彼は夏目智子自身よりもこの件に心を砕いているようだった。
「どうしたの?あの人がまたママに連絡したの?」夏目芽依は物心ついた時から父親という存在が生活の中になく、すぐには言い方を変えられず、仕方なく「あの人」と呼んでいた。
「うん、彼は今日電話して来週処理しに来ると言っていた。お母さんに家を買う件について話すように言ったんだけど、お母さんは頑固で言おうとしないんだ。お金の方が準備できれば、問題ないと思うんだけどね」
電話を切った後、夏目芽依は途方に暮れた。
林田植木の病状は良くなったり悪くなったりを繰り返し、羽柴明彦は会社と病院の間を忙しく行き来し、時々林田希凛のために林田家会社の業務を処理することもあり、家に帰る時間はほとんどなかった。夏目芽依はずっと彼に会えず、話しかける機会もなかった。