テーブルに座って、夏目芽依は顔を上げて羽柴明彦をちらりと見た。彼が自分を見ていることに気づき、思い切って堂々と顔を上げた。
自分は何も悪いことをしていないのだから、なぜ肩身の狭い思いをしなければならないのだろう。
「お腹が少し空いたわ。先に注文しましょうか?」彼女はメニューを開きながら提案した。
「少し待って、まだ来ていない人がいる」
「まだ誰かいるの?」夏目芽依は驚いて彼を見た。さっきは誰も来るとは言っていなかったのに。
入札が終わった後。
「羽柴社長、私が先に車を出しておきましょうか...」木村城太は羽柴明彦の耳元で小声で尋ねた。今の状況は彼が対処できるものではなく、早めに逃げ出した方がいいと思ったのだ。
「ああ」
木村城太が出て行くのを見て、他の人たちも次々と部屋を出て行き、すぐに部屋には三人だけが残った。