「ちょっと待って。」別荘地区の門を通過する時、横を通り過ぎるタクシーを見て、羽柴明彦は木村城太を呼び止めた。「今のタクシーに乗っていたのが誰か見えた?」
「気づきませんでした。どうしたんですか、羽柴社長?何か問題でも?」
「Uターンして、追いかけろ。」羽柴明彦は言った。
木村城太は理解できなかったが、言われた通りにした。結局ここでは羽柴明彦がボスなのだから。
タクシーは高架に乗り、市街地方向へ向かった。「社長、あの車に乗っているのは一体誰なんですか?このまま追いかけ続けるんですか?」
「お前の彼女だ。」
自家用車と違って、タクシーは通常内外両方から透明に見えるフィルムが貼られている。外からでも中の人がはっきり見える。羽柴明彦は気にも留めていなかったが、ゲートを通過する時に車のスピードが落ちた瞬間、何気なく見ると、金田凛香が助手席にきちんと座っているのが見えた。後部座席には何かがあったが、はっきりとは見えなかった。ただ、いっぱいに詰まっていることだけはわかった。