第167章 八菜一汤

辺りを見回しても、羽柴明彦の姿は全く見当たらなかった。

「羽柴明彦は出かけたわ。何か用事があるの?」夏目芽依が尋ねた。

「用事?」羽柴美波は彼女を見て、怒りが込み上げてきた。「あなたってどういう人なの?約束したのに、結局助けてくれないなんて。私があなたを義姉さんと呼んでいたのに、あなたがこんな人だとわかっていたら、最初からお願いなんてしなかったわ」

「芽依、誰が来たの?」夏目智子が声を聞いて、掃除用の手袋をはめたままキッチンから出てきて、羽柴美波を見て困惑した表情を浮かべた。

「お宅のお手伝いさん、変わったの?」

羽柴美波は以前鈴木ママを見たことがあったが、目の前の人は見覚えがなかった。彼女は羽柴明彦がいつも習慣を優先し、使い慣れた人を簡単に変えないことを知っていた。