会社に戻ると、羽柴明彦はドアを押して事務所に入り、席に座った。「木村城太、中條秘書を呼んでくれ。」
中條詩織は自分の席に半日座っていたが、少しも仕事に集中できなかった。心の中では今回は間違いなく解雇されると思っていた。誰が日常生活のちょっとしたことで、うっかり仕事を失うことになるとは思っただろうか?
「羽柴社長が呼んでいるよ。」木村城太が出てきて彼女に言った。
中條詩織の目に映る懇願の色は明らかだった。木村城太はそれを見ていたが、何もできなかった。主に、今回彼女がやらかした失敗は大きくもなく小さくもないが、ちょうど重要な位置に触れてしまったため、他人が介入するのは難しかった。
「木村社長、社長は本当にこのことで私を解雇するんでしょうか?」恐怖のあまり、彼女の声はわずかに震えていた。