「羽柴さん、どうぞお座りください。」片桐恭平は羽柴美波に簡単に挨拶し、二人は順番に席に着いた。
前回の見合いを目的とした出会いでは、羽柴美波はわざわざ髪を黒く染め、肩に垂らし、ニットのセーターやウールのスカート、コートもすべて淡い色調で、優しい雰囲気の装いだった。今回の会合には制約がなかったため、彼女は本来の姿に戻っていた。
片桐恭平は気づかれないように彼女を数回見つめた。煙紫色の髪が頭の上でカジュアルにまとめられ、オーバーサイズのアボカドグリーンの裏起毛パーカーを着て、袖口は長く、ジーンズにマーチンブーツ、外には黒いムートンジャケットを羽織っていたが、入店するとすぐに手に持ち、今は隣の椅子に置かれていた。
この姿はビジネスの話をしに来たというより、アイドルのコンサートから出てきたばかりのようだった。