「どこに連れて行くの?」夏目芽依は車に乗るのを拒んで抵抗した。彼女は金田凛香と一緒に来たのに、このまま行ってしまうなんてどういうことだろう?それに、昼休みはもうすぐ終わるし、午後にはたくさんの仕事が待っている。
「病院だ」羽柴明彦は助手席のドアを開け、大人しく乗るように促した。
「病院になんで?」夏目芽依は自分の顔に触れた。「木村城太は嘘を言っているだけよ。もう痛くないし、女の子にそんな力があるわけないでしょ。行かなくていいわ」そう言って歩き出そうとした。
「待て」羽柴明彦は手を伸ばして彼女を引き止め、車の中に押し込んだ。「行くと言ったら行くんだ。もし何か問題があって治療が遅れたら、残りの人生を馬鹿と過ごすことになりたくない」
馬鹿と...残りの人生を???夏目芽依は頭の中が疑問符だらけだった。平手打ちされて馬鹿になる確率がどれほど低いかはさておき、仮に自分が本当に馬鹿になったとしても、彼と残りの人生を過ごしたいとは限らないのに、何を考えているんだろう~