「義姉さん、義兄はいったいどこに出張に行ったの?」羽柴美波が尋ねた。
夏目芽依は首を振った。羽柴明彦には何でも彼女に報告する習慣はなく、彼が言わなければ、彼女も聞かなかった。
「あなたも知らないの?」羽柴美波は顔を上げて彼女を見て、頬を膨らませ、テーブルの上の様々なお菓子を見て、手を伸ばしてムースケーキを一切れフォークで取り、自分の皿に置いて、小さく口に運んだ。食べながら、小声で言った。「何がそんなに秘密にすることがあるのよ〜」彼女は口をとがらせた。
夏目芽依は本当に知らないと彼女に説明しようと思ったが、口に出す前にやめた。相手がそう思いたいなら、言っても無駄だろう。
「あなたと菅原さんの関係は良さそうね、一緒に買い物に行ったりして。私の義兄は昔、彼女のことを本当に嫌っていたのに」羽柴美波は続けた。「彼女が昔どうやって羽柴家を出て行ったか知ってる?」