三人は金田直樹の車に乗り込み、まず夏目芽依を送ってから自分の家に帰る準備をした。
「もしもし?明彦くん」金田直樹はBluetoothイヤホンで電話に出た。「出張中だって聞いたけど、どう?商談はうまくいってる?いつ帰ってくるの?」
羽柴明彦が電話をかけてきたのはそんな話をするためではなかった。「夏目芽依をどこに連れて行った?」
金田直樹はバックミラー越しに後部座席に座っている夏目芽依を見た。一晩中外を走り回った彼女は、今は後部座席に寄りかかって目を閉じていた。もしかしたらすでに眠っているかもしれない。
「今日ちょっと用事があって彼女を連れ出したんだ。今、車の中にいるよ。これから送り届けるところだ」
「今、お前の家の前にいるんだが」羽柴明彦の声には不機嫌さが滲んでいた。誰が聞いてもわかるほどに。