「足が痛い…」二曲のダンスが終わると、夏目芽依は顔を上げて小声で言った。彼女は普段細いハイヒールを履き慣れておらず、このような靴のヒールは全く支えにならず、体重が全て前足に集中するため、長時間履いていると非常に不快だった。今では小指がこの忌々しい靴に押しつぶされそうで、かかとも擦れて、要するに両足のどこも快適ではなかった。
羽柴明彦は彼女を見下ろすと、自分の革靴に付いた数個の灰色の跡がはっきりと見えた。このまま続けば彼女だけでなく、自分も被害を受けることになるので、仕方なく頷いて夏目芽依を脇へ連れて行った。
いわゆるチャリティーパーティーは、ビジネスマンと慈善家たちの交流の場であり、ダンスは単なる目玉に過ぎない。今、ダンスフロアの中央には半分ほどの人がいれば上出来で、他の人々はみな脇に立ってグラスを持ちながら会話を交わしていた。しかし、全体的に音量は大きくなく、会場も特に騒がしくはなかった。