第272章 空っぽになった一部分

「ねえ、さっき正妻が旦那を公開説教してたの見た?」カレンはいつの間にかパーティー会場に戻ってきていた。どうやら十分休憩したようだ。

夏目芽依は頷いた。「見たわ」こんなパーティーでもそういったことで現場で発狂する人がいるとは思わなかった。上流社会の女性は一般人よりも冷静だと思っていたが、今見ると路上で浮気相手を捕まえて暴力を振るう女性と大差ない。ただ服や靴がより高価で、体型や顔がより手入れされているだけだ。どんな階層でも、こういう事態に理性的に対処できる女性は稀なのだろう。

「さっき旦那を罵倒していた橋本珠美が何者か知ってる?」カレンも一杯酒を注文し、再び彼女の隣に座った。

「何者なの?」夏目芽依は今日のカレンは自分の先生役を買って出ているように感じた。

「彼女は以前、橋本建設の会長の娘よ。橋本建設って知ってる?」