「自分がどこで間違ったか分かっているの?」
夏目芽依は羽柴明彦を見つめながら、心の中で真剣に考えていた。今、自分は分かっていると言うべきか、それとも分からないと言うべきか。このような駆け引きは幼い頃から夏目智子とも何度もやってきたもので、人生で歩んできた最も長い道は、結局人間関係の駆け引きなのだ。
「自分がどこで間違ったか分かっているの?」
「分かりません」
「自分の過ちすら分からないなんて、しっかり反省しなさい。思いつかなければ今日は食事抜きよ」
明らかに、この道は通じない。では別の答え方をしてみると。
「自分がどこで間違ったか分かっているの?」
「分かっています」
「分かっていながら犯すなんて、罪が一層重くなるわ。なぜ間違いだと知りながらそうしたのか、よく考えなさい。わざと私に逆らっているの?私を怒らせて死なせたら、あなたに何の得があるというの」