「ここなの?」目の前の光景を見て、夏目芽依は深呼吸した。
目の前の病院は全国三級病院にも満たない、地方の二級病院のようだった。まだ中に入っていないが、彼女は病院の外観の老朽化の程度から既にいくつかの手がかりを見て取っていた。
以前、羽柴明彦が手配した病院とは対照的に、ここには専用の駐車場さえなく、正面玄関には無許可タクシーの運転手たちや近隣の安宿の無料広告を配る人々が立っていて、近づくとすぐに「行きますか」「泊まりますか」と声をかけてくる。病院ではなく、駅に来たのかと思ってしまうほどだった。
「ここよ…」金田凛香も初めて来たのだった。実は芽依に聞かれるまで、彼女も佐藤凡太がどこに転院されたのか知らなかった。以前、凡太と親しかった旧友に尋ねてようやく分かったのだ。