第280章 正面衝突

オフィスのドアの前に立つと、夏目芽依はすでに緊張感を感じていた。

しかし彼女が想像していたのとは少し違って、中からは大きな口論の声は聞こえてこなかった。どうやら言うべきことはすでに言い終えたようで、今はお互いに説得できない対峙状態、比較的冷静な状況だった。

彼女は軽くドアをノックした。

「どうぞ」佐藤文太の声だった。

オフィスの中では、佐藤文太が自分の席に座っていた。カレンは足を組んでソファに寄りかかり、腕を組んでいた。田中隆は向かいの椅子に座り、肘を膝について眉をひそめ、何かを考えているようだった。彼女が入ってくると、田中隆は立ち上がった。

「とにかく言うべきことは言った。もし彼女を主任デザイナーにするなら、俺は辞める。そんな人間の下で働くなんてありえない」そう言うと、振り返りもせずに颯爽と出て行った。