第299章 少し不公平

木村城太は契約書を夏目芽依の手に渡した。「夏目さん、まずは契約書をご確認ください。問題がなければそのままサインしていただければ結構です。もし何か問題があれば、私がまた持ち帰って修正し、あなたが満足するまで調整します」

夏目芽依は書類を受け取り、まるで千斤の重さを感じた。それはまるで自分の未来がこの上に託されているかのようだった。以前の経験から、彼女は羽柴明彦と再び契約を結ぶなら、一字一句を慎重に吟味しなければならないと決心した。

「先に戻っていいわ、これはもう少しじっくり見る必要があるから」彼女は微笑んだ。

「わかりました」木村城太は答えた。「何か問題があればいつでも電話してください。この件は羽柴社長から全権を委任されていますので」

全権を委任されている、という言葉は妙に聞こえた。しかし夏目芽依はそれについて深く考える余裕はなかった。今は契約書に仕掛けられた落とし穴をすべて見つけ出し、一つ一つ対策を考えることだけに集中したかった。今回は、絶対に油断するわけにはいかなかった。