「人を殺す気か!人を殺す気なのか!」病院の入り口では大きな騒ぎが起き、すでに記者やメディアが集まっていた。
無良心なブラック企業が安全対策をケチって労働者が一生の間麻痺状態に。そんな衝撃的な大きな文字が多くの目を引きつけていた。この二日間、労働者の家族はメディアの前で泣きながら不正を訴え続けていたが、ニュースでは特に大きな話題にはならず、むしろ片隅で事件の経緯を簡単に紹介するだけで、軽く流されてしまっていた。
「羽柴社長、今日も家族が病院の入り口で騒ぎを起こしています。病院の運営にかなりの影響が出ています」木村城太が入室するなり、まず羽柴明彦に事故の進展を報告した。
「原因は分かったのか?」
「一応分かりました。現場の安全対策は完備されており、高所作業に必要な安全ロープなどの道具も用意されていました。ただ、当日の状況は特殊で、現場で一緒に働いていた他の作業員の証言によると、事故の前に監督が安全点検をするよう指示したそうですが、おそらく自分の技術に自信があり過ぎたのでしょう、怪我をした作業員は安全ロープを付けずに高所作業を始め、その後足を踏み外して事故を起こしたとのことです」