カレンは中村海斗がレストランのドアに入ってくるのを見ると、すぐに手を振った。「こっちよ」
中村海斗は前回二人が会った時と同じジャケットを着て、彼女の方へ歩いてきた。以前会った時は夜だったか頭がはっきりしていない時だったので、カレンは彼がどんな顔をしているのかよく見る機会がなかった。今日、目の前に来てようやくはっきり見ることができた。
中村海斗はまだ若く見え、頭の上に突き出た数本の硬い髪と澄んだ眼差しの他に、服装のスタイルも大いに助けになっていた。カレンは、デニムにパーカーとジャケットを合わせた男性を見るのはずいぶん久しぶりだと感じた。
「何が食べたい?今日は私がおごるわ」彼女は笑いながら言い、目を上げて見ると、向かいの人がメニューを真剣に見ていることに気づいた。その様子は自分の好みの料理を選んでいるというより、何か重大な研究課題に取り組んでいるようだった。