第312章 君が可愛いと思う

一方、カレンは人混みの中で最近知り合ったばかりの友人を見つけた。

「なんて偶然~」彼女は中村海斗の肩を叩いた。「あなたもここにいるの?今日はこのバーだけがオープンするわけじゃないでしょ~」

中村海斗は振り向いて、彼女に挨拶した。

手を伸ばしてウェイターを呼び、彼のトレイから焼きエビの軽食を二つ取って、「どうぞ」と言った。

カレンはそこで初めて気づいた。バーのオープニングでは無料のドリンクだけでなく、軽食も提供されていて、人混みの中を行き来するウェイターたちがトレイを持ち、それぞれのトレイには様々な種類の小さなおつまみが並べられていた。

「今日のおつまみは私の担当なんだ」と中村海斗は笑った。彼は時々このようなオープニングイベントのケータリングを請け負っていた。バーのオープニングで要求される食べ物はそれほど多くなく、小さくて洗練された美味しいものであれば十分だった。結局のところ、人々はお腹を満たすためにここに来るわけではない。このような仕事は多くを稼げるうえに、あまり時間を費やす必要もなく、副収入の優れた源だった。