羽柴明彦は手を伸ばしてXLギャラリーの扉を開け、周囲を見回してから奥の展示室へと歩いていった。
「すみません...どちらを探していますか?」ギャラリーのアシスタントが彼の後ろにぴったりとついて尋ねた。
展示品の高さを調整していた林田希凛は振り向くとすぐに彼を見つけ、アシスタントを下がらせた。「早く来てくれたのね」と彼女は笑った。
林田希凛から羽柴明彦に電話があり、会社に少し問題が生じたので会って話したいと言われた。彼女は今妊娠中で、病院に数日入院したばかりだったため、自分から出向くのは適切でないと考え、羽柴明彦が自ら訪れることにした。
「会社にどんな問題が?」
林田希凛は周囲を見回し、「中で話しましょう」と言って、彼を休憩室に案内した。部屋に入っても急いで話し始めるのではなく、林田希凛はコーヒーを二杯注ぎ、一杯を羽柴明彦の前に置き、もう一杯は自分で持った。