第338章 謝罪と謝礼

夏目芽依は真剣に仕事をしていると、机の上に前もって設置されていた電話が突然鳴り、彼女はそれがただの飾りだと思っていた。

「夏目さん、一階のフロントに中村さんというお客様がいらっしゃいます。お通ししましょうか?」甘い声が聞こえてきた。

「中村さん?誰だろう?」夏目芽依はしばらく考えたが、中村という苗字の男性を知っているとは思い出せなかった。

「中村景吾さんとおっしゃっています」フロントの女性が言った。

「あぁ…」夏目芽依は羽柴明彦を見上げて、「いいえ、そのままで結構です。彼をそこで待たせておいてください。今すぐ下に行きますから」と言って、電話を置くと小さな足取りでさっと部屋を出て、一階へと急いだ。

エレベーターの中で、彼女は理解に苦しんだ。二人に関するニュースがようやく人々に忘れられたというのに、この男がまた何をしに来たのだろうか。