第360章 彼女のテリトリー

一日中、夏目芽依は机に向かって奮闘していた。食事もトイレも小走りで行って小走りで戻り、一瞬たりとも無駄にしないよう気を配っていた。

今回の佐藤凡太の件で、彼女は羽柴おばあさんの手段がいかに強引かを知った。羽柴明彦が今回は助けてくれたものの、次にいつ同じことが起こるかわからない。彼女は二つの準備をしなければならなかった。できるだけ早く彼の援助を得て、自分のデザイン会社を持つことだ。

自分の会社さえあれば、一生懸命働いて、お金を稼ぐのは時間の問題だ。もしいつか佐藤凡太の治療費が本当に切られたとしても、彼女にはすぐに補填する能力があり、彼が悲惨な状況に陥ることはないだろう。佐藤凡太は夏目芽依の命の恩人だ。あの時、溺れた時に彼が必死に彼女を守ってくれなかったら、今病床に横たわっているのは彼女だったかもしれない。たとえ以前の感情がなくても、この恩は一生をかけて返すべきものだった。