「恭平兄さん、あなたに前もって説明したいことがあるんです」と夏目芽依は言った。「以前、仕事を探すのを手伝ってくれたことについて、本当に本当に感謝しています。でも今、少し問題が出てきたので、入社の時期を少し延ばしてもらえないかと思って」
片桐恭平は彼女を見つめ、コーヒーを一口飲んだ。
「あなたを雇うのは盛景グループであって、私じゃない。そういうことは直接彼らと話し合った方がいいよ」
「はい、はい」夏目芽依はうなずいた。「彼らと話すつもりです。でも、まずあなたに伝えるべきだと思って。だって、この仕事を得られたのは完全にあなたのおかげですから。こんなに大きな助けをもらったのに、最後にうまくいかなかったら、あまりにも良心がないと思って」
それを聞いて、片桐恭平は微笑んだ。「僕はただちょっと手を貸しただけだよ。本格的な助けとは言えないから、気にしなくていいよ」