バスは走ったり止まったりを繰り返し、途中で少し渋滞にはまり、夏目芽依が民政局の入り口に着いたときには、すでに2時10分になっていた。
羽柴明彦は車に寄りかかり、彼女が慌てて走ってくるのを見て、両手をポケットに入れたまま立っていた。
「離婚にも時間を守れないのか?」顔には怒りの色が浮かんでいた。
夏目芽依は謝るしかなかった。「ごめんなさい、お昼でも渋滞するとは思わなくて…」
羽柴明彦は彼女をちらりと見て、冷たく言った。「入ろう」
夏目芽依は突然彼の腕を引っ張った。「ちょっと待って、話したいことがあるの」彼女はあたりを見回し、車を見た。「車の中で話しましょうか」
羽柴明彦は疑わしげに彼女を見た。心の中で思った、はっ!女というのはこんなものだ。自分が同意しないことを彼女は強引にやろうとし、同意すると今度は何か面倒なことを持ち出してくる。何を考えているのか全く分からない。