第431章 今夜はクルーズパーティー

「これで満足したの?」夏目芽依は顔を上げて彼を見つめ、少し強い口調で言った。

羽柴明彦は何も言わず、そばにいる清掃スタッフに目配せして、床に散らばった食器を片付けさせた。

この時、レストランにはそれほど多くの人はいなかったが、会社の社長とまもなく離婚する妻との間の一幕を、皆は面白がって見物しようという態度で、暗黙の了解のもと静かに見守っていた。

「ここでは話しづらい、ついてきて」羽柴明彦は夏目芽依の腕をつかみ、レストランから連れ出した。

見物人たちからは失望のため息が漏れた。

「ねえ、さっきの人があなたのクラスメイトだったの?」ある人が中條詩織に近づいて尋ねた。「以前、社長が彼女のためにあなたをクビにしそうになったって聞いたけど」

中條詩織はその人を一瞥し、不機嫌そうに言った。「そうよ、それがどうしたの?」